Vol.4 カエルの合唱の仕組みとは?【ニッキン転載記事】

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投資や金融にも求められるSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)の観点。連載「いきものコミュニケーション」は、これまで戦略や目標のような大きな流れを紹介してきたが、実際に自然環境の生き物の生態を知らなければ絵に描いた餅になってしまう。Vol.4では個別の生き物のコミュニケーションについて紹介する。

本記事は、ニッキンONLINE PREMIUMで連載中の記事の転載です。
※媒体社の許諾のうえ転載しております。



そもそもカエルはなぜ合唱するのか

夏が近づいてくると水田ではカエルの合唱が聞こえてきます。最近の都会では水田がかなり減ってしまいましたが、今でもよく聞く風物詩である一方で、うるさくて仕方がないという人も多いようです。

そもそもカエルはなぜ鳴くのでしょうか。

その大きな目的は、オスがメスと繁殖するためにアピールすることです(広告音)。暗い日没後の水田では、カエルたちは互いの姿を見ることができません。そこで自分の場所をメスに示すために精一杯鳴いているのです。

さらに、1匹で鳴くだけでは声も小さく、天敵に見つかりやすくなります。同じ場所に集まって一斉に鳴くことで、遠くにいるメスに「この水田にはオスがいること」を大きな音で示し、さらに捕食されるリスクを分散できています。このように、合唱することは生存のためにもメリットがある行為なのです。



カエルの合唱のミクロ構造

このようにカエルが合唱するメリットはあるのですが、他のオスと声が混ざると区別がつきません。一方で単純に大声で鳴くと体力が減ってしまいます。この問題を彼らはどう解決しているのでしょうか。

彼らは、全体としては一斉に鳴くものの、ミクロには「タイミングをずらす」ことで解決しています。

つまり、一斉に鳴いている中でも、他のカエルの声を聞いて、そのタイミングと逆になるように、自分の鳴くタイミングを調整するのです。こうすることで、一番影響を受ける隣のカエルと声が重ならなくなります。

筆者は、水田で鳴いているカエルを実際に計測して、その行動パターンを数学的に調べる研究をしていました[1]。計測しなくても、実際に水田に行ってよく聞いてみると、カエルたちがタイミングを伺いながら交互に鳴き交わしているようすが実感できるはずです。水田に水が入る時期には鳴き出すので、ぜひ行ってみてください。



モテる鳴き方

一斉に鳴くという合唱の構造、そして個体同士がタイミングをズラすというややミクロな構造まで説明しました。最後に、各個体の個体の違にまで焦点を絞ります。

どんな声のカエルがメスにアピールする力が強いのでしょうか。

実はこれはシンプルで、低い声がモテます[2]。というのも、カエルは身体全体を震わせて声をだすので、声が低いということは体が大きいことを表すからです。体が大きいと体力もあるし、それだけ餌を取る力もあるということを意味するので、メスはそういったカエルを好むわけです。



まとめ

これまでは生物多様性の戦略やフレームワークなど、比較的大きな概念の説明をしてきましたが、実際に生きているのは個別の動物です。彼らのミクロな生態を知らずに、ネイチャーポジティブの実態を知ることは難しいでしょう。

ということで、まずは筆者の専門のカエルの生態、特にコミュニケーションや音にまつわる部分を紹介しました。古くからカエルは日本の生活に密着しており、春の季語にカエル、夏の季語にアマガエルがあるなど、古くから親しまれてきた生き物です。

ちなみに本稿ではカエルが鳴くのはメスにアピールするためだけであるかのように説明して来ましたが、実際は彼らの生態は鳴き声だけでもさらに複雑です。たとえば、オス同士の縄張り争いで鳴いたり(警告音)、ヘビなどに食べられるときにも鳴いたり(危難音)もします。また、逆にメスがオスへのアピールのために鳴く、という種もいます。

こうした生態を知ったうえでカエルの合唱を聞くと、解像度高く聞くことができるようになると思います。多くの場所で水田に水が入り田植えが始まるのは6月〜7月ごろですが、屋久島ではかなり早くて3月から始まるようです。日没後に水田に行ってみて、耳を傾けてみてはいかがでしょうか。



参考文献

ニッキンONLINE PREMIUM 2026年2月22日掲載 (リンク)



#ニッキン #カエル #生き物の不思議 #生物多様性 #自然観察 #いきものコミュニケーション #ハイラブル




この記事を書いたメンバー

水本武志

ハイラブル株式会社代表。カエルの合唱や人のコミュニケーションの研究が専門。 あらゆるコミュニケーションを調べたい。生物研究プロジェクト Project Dolittle もやってます。



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