議事録から会議の「型」を抽出できるか 〜ターンテイクを使った定量分析〜

watch_later 公開日

update 更新日

会議に型はある?

あなたの職場の会議に「決まった型」はあるでしょうか。 週に1回の進捗報告、月に1回の企画会議、年に数回の取締役会……。1つの組織の中だけでも、実にたくさんの会議が開かれています。

会議のテーマが違えば、進め方も変わります。例えば進捗報告会では、参加者それぞれの業務の方向性や状況を漏れなく把握することが目的です。そのため、参加者全員が同じ量の発言をすることが暗黙の前提になります。一方で、似たような「状況把握」が目的でも、1on1ではむしろ部下がより多く話す方が良いとされています。

このように、一口に「会議」と言っても、形態や進行にはさまざまな「型」があります。 もしこれらの型を数値として捉えられるようになれば、組織内の会議が目的から外れていないか、いつ・どのあたりからズレ始めたのか、その変化が業績やエンゲージメントにどんな影響を与えたのか、などの分析が可能になります。

そのためには、会議の型を表現するための指標が必要です。 この記事では、「会議の型」をどのように定義し、どのような指標で捉えることができるのか、そのヒントを探っていきます。

複雑な要素が絡み合う会議

さきほどは、会議分析には会議の型を表現するための指標が必要であることに触れました。そこで、その指標の作成にあたって、過去の記事でも紹介した、「言語情報」、「非言語情報」、「パラ言語情報」の三種類を用いることができそうなことに着目します。そして、その三種類の内、どの情報であれば現実的に扱うことが可能なのかを順に検討していきます。

過去の記事ではその三種類をそれぞれ説明しました。(詳しくは、 Vol.16「言語・非言語・パラ言語?会話の中でやり取りされる情報とは」 を参照してください)

【言語情報】  :言葉の内容による情報
【非言語情報】 :言葉以外の情報(表情や視線など)
【パラ言語情報】:言葉を話すときに伝わる、言葉以外の情報(話す速度や音量)

まず、「言語情報(会議の内容)」を使うのが最も妥当に思えます。しかし、言語情報を定量化することは技術的に非常に難しい領域です。会議の内容や参加者が話すトピックは組織によってあまりにも異なり、一概に同じ指標で扱うことができないからです。

続いて、「非言語情報」について考えてみると、表情やジェスチャー、視線、姿勢、座席位置といった情報を扱う必要があります。これらを取得するには多様なセンサーや環境整備が必要であり、現実的な運用はやはり簡単ではありません。

そうなると、残るのはハイラブルが得意な「パラ言語情報」です。本記事では、パラ言語情報の中でも「ターンテイク」に着目します。ターンテイクは、ひと言で言えば「発言のバトンが誰から誰へ渡ったか」です。ある人の発言の後に誰が発言したか、その遷移(移り変わり)を見ます。

さらに、会議の型を分析するには、組織構造的な観点から分析することが重要です。そのため、なるべく属人的な要素を排除することが求められます。そこで議論参加者に役職や部署などの属性を付与し、これらの属性間でどのようにターンテイクが行われているのか(これを「属性別ターンテイク」と呼びます。)を分析します。

議事録から属性間ターンテイクを抽出

Hylable Discussionを用いると、「誰」が「どの程度」話したかを自動で取ることができます。そのため、参加者同士のターンテイクの検出と属性付けが簡単です。しかし、そのような音声データは一般に公開されていないので、今回は「誰」が「どの程度」話したかが文字データとして公開されている政府系の議事録データを使って分析します。詳しい分析方法は以下の図に示します。(Hylable Disccusionで収録した音声データを使う場合は、参加者に属性情報を付与すれば本記事に近い分析ができます。)

実際の議事録を分析してみよう

本記事では、4つの政府委員会等の議事録を対象に分析を行った結果を報告します。これらの会議ごとのターンテイクの様相からどのような型を見つけられそうかを調べました。属性は、政府系の議事録を用いたため、議論参加者を4属性(産業・学術・官公庁の3属性+事務局)に分類しました。(座長の発言が各参加者発話の間に入ることが多く、支配的になることが事前に予想されたので、結果から除外しています。)

政府系の議事録を用いた理由
(i) 参加者経歴や所属が明記されているため
(ii) 逐語録が体系的に公開されているため
(iii)参加者が比較的自由に発言できるため

分析結果を以下の図に示します。それぞれの会議の点線で囲われた部分に着目してください。

点線で囲った部分に着目し、四会議を3つの型に分けることができました。

①意見収集型(図左側):この型は産業(青色)と学術(緑色)から始まるターンテイク(矢印)が全体の大部分を占めています。
②論点整理型(図右上):この型は産業と事務局(灰色)から始まるターンテイクが全体の大部分を占めています。
③協働調整型(図右下):この型はすべての属性がそれぞれ満遍なくターンテイクしており、官公庁(赤色)もきちんとターンを取っています。

以上のように、同じ政府系の会議でも、会議の目的などによって、属性ごとのターンテイクの様相に違いがあることが分かりました。

どのように応用できる?

今回の分析は少数事例を対象にしましたが、「会議の型」を属性間のターンテイクとして捉えるアプローチには、実務的な応用が可能です。

まず一つ目は、会議が目的から外れていることを検知できる点です。例えば、営業会議の目的は営業会議の目的は広く進捗を聞くことのはずです。そのため、平常時では課長が新人にターンを譲り、属性間の遷移が広く分散しがちです。しかし繁忙期に入ると、中堅層にターンが集中し、遷移が「課長↔中堅」に偏る、といった変化が起こりえます。このような変化は意図的な変化に近いですが、無意識的な変化も検知できる可能性があります。

二つ目は、ズレの原因を組織構造のどこで起きているか切り分けやすい点です。同じ偏りでも、全社の会議で一斉に起きているなら制度や評価、繁忙度などの“環境要因”が疑わしいです。一方、特定部門や特定課に局所的に出るなら、会議設計や参加者構成、アジェンダの置き方といった“運用要因”の可能性が高いです。属性を使うことで、個人名に依存せず比較でき、介入の粒度も決めやすくなります。

三つ目は、介入の効果を会議内容ではなく進行パターンで検証できる点です。例えば「新人にも必ず一度は話してもらう」「冒頭は課長が整理し、後半は実務者同士の往復を増やす」といった運用変更を行ったとき、ターンテイクの遷移が狙い通りに変わったかを定量的に追うことが可能になります。このように、会議の“良し悪し”を断定するのではなく、目的に対して型が整っているかを観測する、という使い方ができそうです。

おわりに

さて、今回は議事録を文字数ベースで処理を行って得たターンテイクを用いて分析を行いました。皆さんの組織にある議事録も今回の方法で分析してみると、新たな観点で組織分析が可能になるかもしれませんね。また、これから会議を分析するときに、Hylable Discussionを使えば会議中の音声を使って自動でターンテイクを得ることができます。また、議事録の作成やターンテイクの計算も簡単にできます。

以上のように、なんとなく行いがちな会議もしっかり分析し、型を見つけることができれば、組織改善の糸口が見つかるかもしれません。ぜひ、参考にしてみてください!

元になっている文献

#会議 #議事録 #ターンテイク #定量分析 #研究 #論文紹介 #ハイラブル

この記事を書いたメンバー

橋本慧海

ハイラブルでアルバイトをしている、対話システムが専門の博士後期課程の学生です。新しく買ったPCのCtrlとFnのキーの位置が旧PCと違うので、作業に手間取っています。



あわせて読みたい記事

見える化を体験しよう

トライアル申し込みはこちら

Web会議版  > 対面版  >

ハイラブルについて

「音環境分析でコミュニケーションを豊かに」学校や会議室での話し合いを見える化する企業です。

メルマガ購読のご案内

ハイラブルの最新情報や、製品のアップデートを随時お届けします。

購読はこちらから >