Vol.3 生物多様性が直面する4つの危機とは?【ニッキン転載記事】

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投資や金融にも求められるSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)の観点。連載「いきものコミュニケーション」の第3回は生物多様性が直面する4つの危機について紹介する。

本記事は、ニッキンONLINE PREMIUMで連載中の記事の転載です。
※媒体社の許諾のうえ転載しております。



生物が絶滅しているのはなぜ?

生物多様性が危機に瀕している!とか、大量の生物が絶滅している!といったニュースや記事を見かけることがあります。たしかに昔は光化学スモッグだとかイタイイタイ病みたいな公害が多かったという話は聞きますが、最近は昔のような典型的な「公害」のニュースは聞かなくなりました。それでも生物多様性の危機が指摘されているのはなぜでしょうか?

今回は「生物多様性の危機」の解像度を上げましょう。参考になるのは環境省のウェブサイトから読める「生物多様性国家戦略」[1]です。これは日本が生物多様性に対してどんな取り組みをしていくかをまとめた文書で、生物多様性の危機を4つ指摘しています。ちょっと直感と違うような「危機」も紹介されているので、どんな危機なのかそれぞれ紹介していきます。


第1の危機 人間活動が多すぎる

まずは、イメージがしやすい人間が活動をしすぎるという危機です。乱獲や森林の伐採、開発などが中心です。たとえば、湿地が住宅地やゴルフ場になることで、そこを繁殖地にしていた昆虫や両生類が住めなくなる、といったことが起こります。ただ、最近は自然に配慮した開発などが広く行われるようになり、いわゆる開発や乱獲の影響は減ってきているようです。しかし、盗掘や希少種の密猟などはまだ残っており、生物の個体数が減る要因になっているようです。

太陽光発電のような、気候変動の対策のために行われている開発も、場所や方法によっては生物多様性に悪影響があるという報告がある点は興味深いですね。



第2の危機 人間活動が少なすぎる

次は、逆に人間の活動が少なすぎるという危機です。直感的には「手つかずの自然」の方が豊かなように感じますが、実はそうではありません。

「里山」と呼ばれる人が薪などのために木を伐採したり狩猟をしていた山は、数百年以上に渡って近くに住む人の手が入り続けてきました。これによって里山は、ある場所は木が生い茂っているが、ある場所は木が切られて開けている、というように同じ場所でも環境の多様性が生まれています。これが、その地域の生物多様性を維持するために重要だったというのです。このように、ほどほどの頻度と強さで環境がかき乱されると生物多様性が高くなりやすい、という現象は「中規模撹乱仮説」とも呼ばれ、里山は典型例のひとつです。

しかし、近年は高齢化や過疎化によって人が減り、中規模の撹乱をする人が減ってきています。そのため、これまで撹乱され続けてきた場所が放置されてしまい、逆に多様性が減ってしまうというのです。
 

第3の危機 人間が持ち込む

3つ目は人が持ち込んだものによる危機です。外来種がもっとも有名で、たとえばブラックバスやウシガエルなどが知られています。その生物がもつ本来の移動能力を超えて入り込んだ、というのが問題の原因です。こうした生物が既存の生態系に影響を与えるために、日本では「外来生物法」という法律が定められ、「特定外来生物」に指定されたものは飼育や保管、移動などができないようになっています(たとえばウシガエル[3])。

人間が持ち込むものは外来種だけではありません。たとえば工場の排水から出てきた化学物質や、化学肥料の使いすぎによる影響も指摘されています。こうした化学物質は川や海を通じて他の場所にも影響を与えるので、広い意味で人間が持ち込んでいると言えるでしょう。



第4の危機 地球環境が変化する

最後の危機は、地球環境の変化による生物多様性の危機です。たとえば気温が上昇することでこれまで住んでいた場所に生物が住めなくなったり、豪雨によって生息地が破壊されたりすることもあります。

これは、一人ひとりが気をつければ解決する種類の問題ではありません。さらに、第1の危機で紹介したように、第4の危機に対策するためにソーラーパネルを設置しても、やり方によっては第1の危機を招いてしまうというジレンマも抱えています。たとえば山を切り開いてソーラーパネルを大量に敷き詰めると、そこに住んでいた動物が住処を失ってしまうからです。



まとめ

今回は、生物多様性国家戦略の冒頭を参考にしながら「生物多様性の危機」とは何かを分解していきました。国内外では、こうした危機を克服するために、30by30といった保護目標を掲げたり、TNFDといったフレームワークを通じて生物多様性に関するリスクや依存を開示するような動きが出ています。

企業や自治体など多くの団体が生物多様性保護やネイチャーポジティブといった文脈で取り組みを行い、ニュースにもなっています。こうした4つの危機の観点から、「この取り組みはどの危機に着目しているのか」を考えてみるのはよいでしょう。


参考文献


ニッキンONLINE PREMIUM 2025年12月30日掲載 (リンク)



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#生物多様性 #サステナビリティ #SDGs #ネイチャーポジティブ #ESG #ハイラブル




この記事を書いたメンバー

水本武志

ハイラブル株式会社代表。カエルの合唱や人のコミュニケーションの研究が専門。 あらゆるコミュニケーションを調べたい。生物研究プロジェクト Project Dolittle もやってます。



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