魔女はなぜ鍋でカエルを煮るのか シェイクスピアからドラえもんまで

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このシリーズの筆者の水本武志です。ハイラブル株式会社の代表取締役CEOを務めています。

私はカエルの合唱の研究で博士号を取得し、現在も生物の声に関する研究や製品開発を行っています (私のカエル研究について詳しくは こちらの記事)。 よりカエル博士になるためには、カエルと文化にまつわることも知っておく必要があるだろうと思いカエルにまつわる話を調べて共有していくことにしました。

ぜひ気楽に楽しんで読んでみてください。

魔女の鍋には何が入っている?

シェイクスピアの『マクベス』[1]に、三人の魔女が大きな鍋で呪いの薬を煮る場面があります。

魔女が最初に放り込むのは、冷たい石の下で31日ものあいだ毒を溜めて眠っていた、一匹のヒキガエル。その後、「イモリの目とカエルのつま先(toe of frog)」「トカゲの脚」「沼の蛇の切り身」。そして全員で「Double, double toil and trouble」と唱えます。

マクベス第4幕、大釜を囲む三人の魔女(メアリー・ホア、1781年)

メアリー・ホア《マクベスの三人の魔女:Double, Double, Toil and Trouble》(1781年)
パブリックドメイン(Wikimedia Commons)

魔女が大きな鍋で何かを煮ているシーンはよく見ますよね。さらに、カエル、トカゲ、蛇、イモリが定番として使われています。

なぜカエルを煮るのか

ここではカエルに着目します。なぜカエルを煮るのでしょうか。いくつかの理由が考えられてきました。

1つ目は、カエルはおたまじゃくしからまるで別の姿へ変わる(変態)ということです。カエルにまつわる文化を紹介している本『Frog』[2]では、この「姿を変える力」がまるで魔法のようなので、魔法の生き物とみなされたのではないかと見立てています。

2つ目は、昔のヨーロッパでは、ヒキガエルは毒のかたまりだと考えられていました[2]。でも、博物学者のトプセルが「魔女は夫を毒殺するのにヒキガエルの毒を好んだ」と記したことが紹介されています。

この毒殺の話は記録にも残っているそうです[2]。1590年に実在の魔女たちが「ヒキガエルと蛇の皮」を材料にした毒で王を殺そうとした、というのです。この記録が事実かどうかはともかく、少なくとも、当時の人にとって、魔女の鍋の中身はファンタジーの中のできごと、というわけではなかったようです。

定番!魔女の鍋のレシピ

約400年前のマクベスで書かれたこのレシピは、現代に至るまで様々な場所で使われています。

ハロウィンでも魔女が大鍋をかき混ぜている映像がありますね。こんなふうに、「魔女が気味の悪い生き物を鍋で煮ている」という絵は、400年前から世界中に広がっていきました。

有名どころでは、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』[3]では、劇中で合唱団が Double Trouble という歌を歌っています。歌詞には「イモリの目、カエルのつま先…」とマクベスの魔女の呪文がそのまま使われています。

もちろん日本にもあります。

ここで私が好きなのが『ドラえもん のび太のパラレル西遊記』[4]です。1988年公開でだいぶ前なのですが、ドラえもん映画の中でも飛び抜けて怖いと言われています。たしかレンタルビデオ屋さんで借りてみて、とても怖かった記憶があります(Netflixで見られます)。

一番怖かったシーンが、のび太が家に帰ったところです。のび太のママがご飯を作ってくれているのですが、家の中が妙に暗くて奇妙な雰囲気です。そこで作ってくれたのがカエルとヘビの唐揚げ、そしてトカゲのスープでした。安心できるはずの家が侵食されているという、近年のホラーでは定番の表現ですがかなり怖かったです。

(ちなみに、何も知らないのび太とドラえもんが美味しいと言っているとおり、後に中国でたべたカエルの唐揚げは大変美味しい味でした。)

当時は怖かった!と思っただけだったのですが、よく考えると、ここで使われている素材もマクベスの定番レシピが実は忠実に再現されていることがわかります。

このように、イギリスで生まれた魔女のイメージが、映画、アニメ、ハロウィンとかなり一致するモチーフが使われているのは、偶然ではなくマクベスの影響だと私は推測しています。見た目は西洋の魔女から妖怪までいろいろですが、使っているレシピが一貫しているからです。

まとめ

今回は魔女が大鍋で何かを煮ているという定番シーンを中心に、カエルと魔女の関係を紹介しました。400年にもわたってカエルは魔女のつかう道具として長く使われてきたようです。次に魔女が出てきたらぜひ探してみてください。

参考文献

[1] ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』第4幕第1場(魔女の釜の場面。テキストはパブリックドメイン)
[2] シャーロット・スレイ『Frog』Reaktion Books(Animal シリーズ), 2012年.
[3] 映画『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(2004年) 挿入歌「Double Trouble」(作曲:ジョン・ウィリアムズ/歌詞は『マクベス』より)
[4] 映画『ドラえもん のび太のパラレル西遊記』(1988年、監督:芝山努)

#カエル #マクベス #ドラえもん #ハイラブル #KoeTurri


この記事を書いたメンバー

水本武志

ハイラブル株式会社代表。カエルの合唱や人のコミュニケーションの研究が専門。 カエルの連載で新たな知識を得ている。

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