Vol. 27 会議を測って見える価値とは【ニッキン転載記事】

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現代のAIが進化したビジネス環境で新しい発想を生み出すには、人間同士のコミュニケーションの質の向上は重要である。とくに、対面やオンラインが混在する環境で、会議・議論・相談といった日々のコミュニケーションの重要性は一段と高まっている。

こういった着想から始まったシリーズ「会議が見える〜音環境分析でコミュニケーションを豊かにする〜」では、17万人以上の議論を分析してきた音の専門家が、これまで4年半にわたって会議の様々な観点を解説してきた。

最終回となるVol.27では、これまでの連載を振り返った上で、最近重視されてきている会議を計測する意味について紹介する。


本記事は、ニッキンONLINE PREMIUMで連載中の記事の転載です。
※媒体社の許諾のうえ転載しております。



本連載の3つの共通点

本連載ではこれまで様々な場面のコミュニケーションについて紹介してきましたが、共通点は3つあるといえます。

1つ目が、会議の「構造」に着目することです。

誰が多く話したのか、誰とやり取りが多いのか、いつ沈黙が生まれたのか、といった情報は、会議の内容ではありません。しかし、こうした非言語の情報から得られる会議の構造が、コミュニケーションの質を左右します。定例会議 (Vol.1)やアイデア出し会議 (Vol.2)の定量化方法を紹介したり、会話の哲学(Vol.11、Vol.12)、間の価値 (Vol.24)、沈黙の価値 (Vol.25)についても紹介しました。

2つ目が、計測すると行動変容が起こることです。

「会議が見えて何になるのか」と思われる方もいるかも知れませんが、実はこの計測して見えたデータを人が見るだけで行動変容が起こるのです。私たちがこれまで計測してきた中でも、教育現場はもちろん、企業の定例会議で同じことが起きています。1on1の場面での使い方(Vol.14)や、会議の疲れ方(Vol.22)、周囲の音の情報(Vol.19)などの観点で行動変容について紹介しました。

3つ目が、計測データをポジティブに使うことです。

会議の見える化は、ともすれば圧力になってしまいかねません。たとえばバランスゲーム(Vol.3)やポカンゲーム(Vol.8)、ビブリオバトル(Vol.10)、偉人ゲーム(Vol.20)で楽しく計測データを使ったり、ブレストのようなよく話す人が有利な場をより良くするアイデアを紹介しました。

会議と企業評価

こうした会議を見るというアイデアは、最近は重要性が高まってきています。

というのも、企業の人材に関する情報開示のニーズが高まっているからです。たとえば2026年3月期の有価証券報告書から「経営方針・経営戦略等と関連付けた人材戦略」の記載が義務付けられました[1]。さらに「人的資本可視化指針」の改訂版も公表されました[2]。改訂版の背景にあるのは、企業と投資家の関心のずれです。政府が三井住友信託銀行のガバナンスサーベイをもとに整理した資料[3]では、「人事戦略が企業価値向上につながるストーリー」を重視する企業が47%なのに対し投資家は70%、「人事戦略が影響を与える財務指標」では企業4%に対し投資家44%でした。同じ資料では、企業の開示が女性管理職比率やエンゲージメントサーベイ結果といった一般的な項目にとどまり、経営戦略との連動が書かれていないケースもあると指摘しています。

そのエンゲージメントサーベイの結果も、実は開示していない企業が多いようです。パーソル総合研究所が2023年3月期のTOPIX500企業380社の有価証券報告書を調べたところ、エンゲージメントに何らか言及した企業は64.2%、実績値まで開示していたのは27.9%でした[4]。

そもそも、エンゲージメントスコアも女性管理職比率も、あくまで結果を表す指標に過ぎません。それを動かしているのは日々のコミュニケーションのはずですが、そうした情報を測るアイデアはまだ広まっていません。

経済産業省と日本健康会議が進める「健康経営優良法人認定制度」でも、「コミュニケーションの促進に向けた取り組み」が認定要件の一つ(選択項目)に入っています[5]。役職や部署を越えた従業員同士の連携を強め、メンタルヘルス不調を防ぐために重要だとされているためです。

まとめ

本連載では、人のコミュニケーションを中心にハイラブルの事例や研究事例を紹介してきました。こうしたコミュニケーションは、昨今重視されている非財務指標の重要な側面であるといえます。

特に、GPT-4(OpenAIが開発した大規模言語モデル)で作成した記事(Vol.7)を紹介したときはまだ珍しいものでしたが、最近は生成AIを使って文章を作成するのも当たり前になってきました。生成AIに整形された「きれいな」テキストばかりが記録されていくので、言い淀みや間など、テキストに残らないコミュニケーションをどう残すのかは、今後のコミュニケーションの記録に重要になっていくのかもしれません。

長い間お読みいただいてどうもありがとうございました。 この連載が豊かなコミュニケーションをする一助になっていれば幸いです。

参考文献
  • [1] 金融庁、 『企業内容等の開示に関する内閣府令』等の一部を改正する内閣府令の公布、 2026.
  • [2] 内閣官房・金融庁・経済産業省、 人的資本可視化指針(改訂版)、 2026.
  • [3] 内閣官房・金融庁・経済産業省、人的資本可視化指針の見直しについて、2025.
  • [4] パーソル総合研究所、エンゲージメントとは何か――人的資本におけるエンゲージメントの開示実態と今後に向けて、2023.
  • [5] 経済産業省・日本健康会議、健康経営優良法人認定制度、2025.

ニッキンONLINE PREMIUM 2026年9月12日掲載 (リンク)



#ニッキン #ハイラブル #ビジネススキル #コミュニケーション力 #人的資本




この記事を書いたメンバー

水本武志

ハイラブル株式会社代表。カエルの合唱や人のコミュニケーションの研究が専門。 あらゆるコミュニケーションを調べたい。生物研究プロジェクト Project Dolittle もやってます。



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