自然や生態系の保全が重要であることは、SDGsやESGなどのキーワードで広く認識され、投資や金融においても、こうした観点が求められている。連載「いきものコミュニケーション」は、17万人以上のヒト会話を分析し、生物の声の計測事業も行っている音の専門家が生物とコミュニケーションについて解説する。生物多様性の理解を深めるには、個別の種の行動を知ることも欠かせない。Vol.5は鳥の鳴き声について解説する。
本記事は、ニッキンONLINE PREMIUMで連載中の記事の転載です。
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鳥の鳴き声:さえずりと地鳴き
ウグイスはホーホケキョ、スズメはチュンチュンなど、鳥といえばよく鳴くイメージがあるのではないでしょうか。こうした鳴き声は季節を感じるきっかけにもなりますね。
そもそも鳥の鳴き声には「さえずり」と「地鳴き」の大きく分けて2種類があります。さえずりは、繁殖期に鳴く求愛の声で、オスからメスへのアピールに使われます。私たちがよく聞く鳴き声、たとえばウグイスの「ホーホケキョ」という鳴き声はさえずりです。一方で地鳴きは普段の鳴き声です。ウグイスの地鳴きは「ジッ」というような音で、あまり目立たない鳴き声だったりします。
鳥の方言
実は、この印象的なさえずりには、地域ごとの「方言」ともいえる違いがあります。
このような現象は、たとえばミヤマシトド[1]などで古くから研究対象にされています。地域ごとに鳴き方の特徴があり、若いうちにその鳴き方を学習するのです。つまり、同じ種であっても、地域ごとにさえずりに特徴があるというわけです。
地理的に離れて交流が少なくなると、鳥たちの鳴き方の違いは徐々に大きくなります。その違いが大きくなると、「方言」と呼べるほどの差が生まれるのです。
受け継がれるさえずり
同じ種なら同じ鳴き声になりそうですが、なぜ方言が生まれるのでしょうか。
それは、鳥が親や周囲の鳥の鳴き声を真似るからです[2]。いくつかの鳥は、生まれ持った鳴き声を鳴くのではなく、子供の時に親の歌声を真似ることが知られています。この真似をするときに、少し間違って覚えてしまうようなのです。この間違いを代々受け継いでいくことで、交流のない地域の鳥たちの鳴き方の違いが大きくなっていき、方言として定着していくのです。
まとめ
今回解説したように、鳥のさえずりは地域ごとにパターンが少しずつ異なっています。春先は繁殖期で多くの鳥が鳴くので、旅行や出張で遠出をしたときに鳥の声に耳を傾けて、鳥の方言の違いも探してみてはいかがでしょうか。
参考文献
- [1] P. Marler, P. & M. Tamura, Song ‘Dialects’ in Three Populations of White-crowned Sparrows, The Condor, 64(5): 368–377, 1962
- [2] H. Williams & R. F. Lachlan, Evidence for cumulative cultural evolution in bird song, Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci 31 January 2022; 377 (1843): 20200322, 2021.
ニッキンONLINE PREMIUM 2026年5月4日掲載 (リンク)
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この記事を書いたメンバー
水本武志
ハイラブル株式会社代表。カエルの合唱や人のコミュニケーションの研究が専門。 あらゆるコミュニケーションを調べたい。生物研究プロジェクト Project Dolittle もやってます。